エヌビディアのCTO、暗号資産よりAIチャットボットのほうが有用と主張
大手ハイテク企業が新興技術について強い意見を持つのは珍しいことではない。エヌビディアのマイケル・ケーガンCTO(最高技術責任者)もその例外ではない。
ケーガン氏は、ガーディアンの最近の取材の中で、社会に現実の価値をもたらしていないとして暗号資産(仮想通貨)を一蹴し、チャットGPTのようなAIチャットボットのほうが自社リソースの有効活用になると述べた。
しかし、ケーガン氏の主張は全体として問題がある可能性があるため、詳しく見てみる必要がある。
まず、AIチャットボットと暗号資産の比較に本質的な欠陥がある。
AIチャットボットは否定できない利益をもたらすが、その用途と目的は暗号資産とは大きく異なる。
ビットコイン(BTC)などの暗号資産は当初、分散型で、安全で、プライベートな取引手段として運用されるよう設計された。
これら2つの技術を比較することは、リンゴとオレンジを比べるようなものだ。単純に、直接比較するには効用が違いすぎる。
●ケーガン氏による否定:多面的問題の過度な単純化
次に、「社会に何も有益なものをもたらさない」「一時的な流行」だとするケーガン氏による暗号資産の否定は、多面的問題を過度に単純化している。
暗号資産は確かに金融業界を変革し、国境を越えたより迅速で効率的な取引を可能にしている。
さらに、ベネズエラやジンバブエなどに国々で見られるように、暗号資産は通貨の不安定な国々の住民に対し、資産を保護し世界市場にアクセスする力を与えている。
ケーガン氏の否定的見解は、こうした実体のある社会的利益を見落としている。
さらに、暗号資産の基盤技術であるブロックチェーンは、金融分野を大きく超えた応用の可能性がある。
スマートコントラクト、サプライチェーン管理、安全なデータ共有などは、ブロックチェーン技術が様々な産業に革命をもたらす可能性のほんの数例に過ぎない。
暗号資産の価値を無視することで、ケーガン氏は軽率にもブロックチェーン自体の可能性を損なわせている。
●エヌビディアの暗号資産分析は誤解を招く
暗号資産のマイニング/検証は高頻度取引に似ているというケーガン氏の主張は、誤解を招くものだ。
どちらも大量の計算力を必要とするが、社会への影響は比較にならない。
高頻度取引は、金融市場を不安定化させる可能性があるとして批判されているが、暗号資産には金融を民主化し、金融包摂の機会を提供する力がある。
両者を同一視することは、暗号資産の中核的価値と目的を歪めるものだ。
●エヌビディアの反暗号資産的姿勢はイノベーションを抑圧する恐れ
最後に、AIシステム開発におけるエヌビディアの役割や、グラフィックカードのマイニング機能を制限する決定に関するケーガン氏の見解には、疑問がある。
同社がAI研究やゲームの顧客を優先したいのは理解できるが、こうした決定の意味するところを認識することは重要だ。
暗号資産マイニング用ハードウェアへのアクセスを制限することで、エヌビディアは潜在的にイノベーションを抑圧し、暗号資産の基本原則に逆行するマイニング/バリデーターの権力の中央集権化を招いている。
暗号資産に反対するケーガン氏の意見は、良く言っても複雑な問題の過度な単純化であり、悪く言えば暗号資産が社会にもたらし得る潜在的利益の否定だ。
議論をAIチャットボットと暗号資産の二者択一に縮小することで、ケーガン氏はこれらの技術を取り巻く繊細な対話を害している。
暗号資産とAIチャットボットは共存可能であり、一方をだしにしてもう一方を否定するのは賢明ではない。
(イメージ写真提供:123RF)
This story originally appeared on cryptonews.com.
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