ICOとは?

 ICO(イニシャル・コイン・オファリング、仮想通貨技術を使った資金調達)とは、資金調達をしたい企業や事業プロジェクトが、独自のトークン(デジタル権利証)を発行・販売し、資金調達する手段・プロセスのことを指します。投資家にはトークンを購入してもらいますが、基本的に株のような議決権や配当など対価の支払いはありません。トークンセールなどとも呼ばれ、従来型の新株発行を利用したIPO(新規株式公開)とは異なる資金調達手段として注目を集めています。

 トークンは発行体の事業・プロジェクトの目的とその発展によって価値を変えていきますが、図表6のような分類で大別されています。

図表6:ICO時に発行されるトークンの分類と特徴

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※ 出所:モーニングスター作成

 このように様々な設計のトークンが存在しますが、既存の金融法制に抵触するものもあり、トークンがどの種類に該当するかを理解することが大切です。

 一般的に、企業もしくは事業プロジェクトが資金調達を行う場合、金融機関からの借り入れ(デットファイナンス)を行うか、もしくは新株発行(エクイティファイナンス)により出資を受けるかのいずれかの方法がとられます。ただ、こうした従来の方法は手続きの煩雑さに加え、信用力の低いスタートアップなどは金利負担などで、資金調達に踏み切りにくいという難点がある。ICOであれば、トークンの発行体には、(1) 出資者への配当は不要、(2)利払い負担がない、(3) 出資者に議決権は付与されず発行体は経営に関与されるリスクがない、(4)インターネットを介しグローバルな資金調達が可能――といったメリットがもたらされるのです。

 一方で、問題点も多く存在します。証券取引所における上場審査のように第三者機関が事業者を細かくチェックするプロセスがないため、企業やプロジェクトの信ぴょう性、将来性、安定性などが担保しづらいというデメリットがあります。発行体は出資者を募る際に「ホワイトペーパー」という目論見書(資金調達目的を投資家向けに説明する事業概要をまとめた文書)のようなものを任意で発行するケースがほとんどですが、難解な文言が多く含まれ、一般の投資家が理解するのはかなり困難です。金融商品取引法のような準拠法に沿った内容ではないことも懸念材料です。

 

 税制面の問題も存在します。有価証券ではなく、モノ扱いのトークンを発行するICOでは、既存の金融規制の適用を受けない代わりに、会計処理は売上計上(資産扱い)とされ(株式や債券は、資産や負債として計上)、課税対象となります。多額の資金調達になると、資金効率は悪いといえるでしょう。

 ICOにはメリットとデメリットが存在します。プロジェクト実現のために、本当にICOが適切なのかを見極めることは、非常に重要なポイントになってくると考えられます。