米CFTC委員、2008年の金融危機と仮想通貨市場の類似性を警告

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●新たな金融安定リスク

米商品先物取引委員会(CFTC)のクリスティ・ゴールドスミス・ロメロ委員は26日、現在の暗号資産(仮想通貨)市場は、伝統的な金融システムと同様の金融安定リスクに直面していると指摘。2008年の金融危機の要素と類似性があり、伝統的金融との結びつきが高まるとシステミックリスクにつながる可能性があると警告した。

国際スワップ・デリバティブ協会のカンフェレンスで講演したロメロ委員は、「仮想通貨の冬」を引き起こす原因となった市場の脆弱性は、2008年の金融危機と類似しており、市場内リスクの増大を警告していると述べた。

ロメロ氏は、アルゴリズム型ステーブルコイン「TerraUSD」と、そのシステムの基盤であるルナの破綻が、ヘッジファンドThree Arrow Capital (3AC)をはじめとする仮想通貨企業の破産を連鎖的に引き起こしたと指摘。このような仮想通貨市場の伝染リスクと暴落リスクに対する脆弱性を、複雑で不透明な「革新的」デリバティブ商品が引き金となり、最終的に大規模な金融機関の破綻を招いた2008年の金融危機の状況と重ね合わせた。

同氏はまた、2008年の危機では、規制されていない金融機関や金融商品に対する金融システムの脆弱性に、規制当局が気づいていなかったことを指摘。現在、規制が確立していない仮想通貨市場においても、規制当局はエクスポージャーやリスクの実態を把握することができないことを問題視した。

一方、2008年の金融危機後、議会と金融規制当局の改革努力により、規制当局の権限が拡大し、透明性が向上した結果、米国では金融の安定性が高まったと主張。仮想通貨市場のリスクに対する監視能力に支障をきたさないためにも、CFTCに追加的な権限が与えられることの重要性を訴えた。

●伝統的な金融システムとの結びつき

ロメロ氏は近い将来、仮想通貨業界と伝統的な金融機関との相互関係が強まれば、金融安定リスクが高まり、ひいてはシステミックリスクを引き起こす可能性もあると警告した。

同氏は、伝統的な金融機関が仮想通貨市場への進出に対して関心を高めていると述べ、ステーブルコイン、年金基金による仮想通貨への投資、カストディサービス提供などで両市場が、間接的にでも関係性を持ち始めている状況を説明した。

●仮想通貨特有のリスク

ロメロ氏は「新たなテクノロジーは新たなリスクをもたらす」と主張。仮想通貨の匿名性がマネーロンダリング、テロ資金調達やダークネットの違法取引に使用される可能性を挙げた。

また、ハッキングや盗難が急増し、詐欺や市場操作などの不正行為が横行していると指摘し、CFTCが2022年に起こした訴訟の20%以上が仮想通貨関連のものだったと述べた。

さらに仮想通貨企業では、伝統的な金融では異なる事業体として運営される機能を、同時に提供している場合があると指摘。取引所はマーケットメーカー、清算機関、融資、カストディアンを兼ねている場合があり、利益相反のリスクがあると説明した。

●同じリスク、同じ規制結果

ロメロ氏は米国政府が仮想通貨とその市場がシステミックリスクのレベルに達する前に、金融安定化リスクへの取り組み行うべきであると指摘。「金融危機後の改革と同様、議会がCFTCに追加的な権限を与えることで金融安定化リスクに対処することができる」と主張した。

同氏は金融安定化リスクへの対処方法として、「同じリスク、同じ規制結果」というアプローチを提案している。また、仮想通貨に対する「規制当局の窓口」が確立していない状況下でも、CFTCはリスク評価を続けているとアピールした。

米国における仮想通貨の規制については、CFTCと米証券取引委員会(SEC)の両機関による監督権限争いが繰り広げられている。

CFTCのロスティン・ベーナム委員長は先月末、CFTCが仮想通貨の規制を主導すれば、業界に大きなメリットをもたらすことができる可能性があると発言。規制が整備された市場では、ビットコインの価格が2倍になる可能性もあると語った。

(イメージ写真提供:123RF)

https://coinpost.jp/?p=401866

CoinPostに掲載された記事を、許可を得て転載しています。

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