ビルトイン形式のロイヤリティでクリエイターの価値を最大化する

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 アーティストとデジタルプラットフォームの間の戦いは、よく知られたことであり、何も新しいことではない。Web1時代には、メタリカのラーズ・ウィリッヒ氏がナップスターでの違法ダウンロードに対して訴訟を起こしたことが大きな話題となった。

 こうした課題はWeb2の世界でも続いている。スポティファイなどの音楽配信プラットフォームは、ミュージシャンに支払う報酬が時として微々たるものであることから、しばしば非難を受けている。受賞歴のあるクラシックヴァイオリニストのタスミン・リトル氏は、パンデミック(感染症の世界的流行)時にスポティファイで6カ月間の配信を行い、再生数は合計350万回以上であったというが、わずか15.50ドルしか受け取れなかったと主張している。

 ミュージシャンにとってロイヤリティの支払いは日常的なものであるが、ほとんどのアーティストにとってはそうではない。多くのアーティストは初回の販売時にしか報酬を得ることができない。その作品の価値が上がったり、作品が再販売されても、アーティストが追加の報酬を受け取ることもほとんどなければ、作品の出所や取引状況を長期にわたって把握することもほぼない。

●クリエイターの価値を最大化する

 ブロックチェーン技術(特にトークン化技術)は、アーティストが公平に報酬を受け取り、権利が保護されるようにすることで、この課題を解決し、より幅広いクリエイティブエコノミー(創造経済)を促進するために役立つと言われてきた。OnXRPによると、「ロイヤリティはWeb3時代のアートにおいて重要な部分である。実際、NFT(非代替性トークン)の強気相場の始まりにおいて、ロイヤリティは主なセールスポイントの1つだった。アーティストはデジタル領域で作品を販売するだけでなく、以前は困難だった二次販売での収益を永続的に受け取ることができた」という。

 ブロックチェーンに所有権を記録し、スマートコントラクトが報酬の支払いを指示することで、アーティストは自身の作品からの安全かつ継続的な収入源を保証された。それは、新たなクリエイター経済の始まりと謳われていた。

 しかし、その理想的なビジョンは必ずしも現実にはなっていない。X2Y2やマジック・エデンといった一部のマーケットプレイスは最近、ロイヤリティをオプションにするという動きを見せている。NFTコミュニティからの猛烈な反発に直面した後、両社は譲歩し、ロイヤリティを復活させたり、クリエイターごとのオプションにしたりした。最大のNFTマーケットプレイスであるオープンシーでさえも、クリエイターのロイヤリティをポリシーから除外することを検討していたが、コミュニティの反発を受け考え直したという。

 しかし、今後再び、あるいは責任感のない企業によってロイヤリティが除外されるのを防ぐためには、何ができるだろう。価値の公平な配布に加え、アーティストは基本的な著作権を超えた自身と作品の保護をどのように確保することができるのか。

●プロトコルレベルのロイヤリティ保護

 クリエイターのロイヤリティをプロトコルレベルで実施することは、クリエイターの価値を最大化するためのカギとなるが、すべてのチェーンやマーケットプレイスがこの基準を守っているわけではない。これはクリエイターコミュニティからの反発を招いている。オンチェーンで構築されたプロジェクトでロイヤリティが実施されなければ、クリエイターの忠誠心と継続性に対する報いやインセンティブはほとんどないことになる。

 オンチェーンNFTやクリエイターエコノミーが目指すのは、クリエイターに還元される価値の最大化であり、XLS-20はこの信念を具現化したものである。23年初めにローンチされたXLS-20は、クリエイターを念頭に置いて設計されており、ロイヤリティを確保し、実行することができる。NFTプロジェクトのローンチに必要な技術的要件を緩和し、自動ロイヤリティや共同所有権といった重要な機能を組み込むことで、シームレスで広くアクセス可能なNFT体験を実現している。これは、ロイヤリティや長期にわたる取引、作品の出所を追跡する大規模なチームを持たない小規模なアーティストにとって特に重要なものである。小規模なアーティストは、手数料と取引内容が透明化されたマーケットプレイスを必要としているのだ。

 受賞歴のあるアーティスト兼著者のBUA氏は、2月に作品の発売を予定している。同氏は、「二次市場での売買やロイヤリティをアルゴリズムで追跡するのは難しい。アーティストは、強制力や追跡可能性など、台帳に参加するためにロイヤルティを手放さなくて済む正確な保護を必要としている」とコメントした。

 APIコールやメインネット統合にロイヤリティをプログラミングすることで、XLS-20は複雑なスマートコントラクトベースのロイヤルティの必要性を排除し、管理と追跡を容易にすると同時に、第三者がロイヤリティを無効化できないようにする。これは、よりシンプルかつユーザーフレンドリーな設計であり、難読化や変更が不可能なオンチェーン検証により、プロセス全体を通じて契約が確実に実施されるようにする。

 アーティストのジェシカ・ラグジー・エウド氏は、「NFTを作成する多くのアーティストにとっての大きな障害物の1つが、スマートコントラクトの必要性である。一般的にアーティストは、テクノロジーやコードではなく創造性やアイデアに長けている。XLS-20は、複雑なスマートコントラクトを必要としないため、アーティストにとって望ましいものだ。使い勝手が良いため、テクノロジーよりもクリエイティブなプロセスに集中したいアーティストにとってはより魅力的だ」と話している。

●XRPL、NFTクリエイターが選ぶチェーンとなる

 このNFT体験の向上の核となるのは、高速かつ安価で、拡張性のあるチェーンとしてのXRP台帳(XRPL)が持つ利点である。わずかなコストで5秒以内に大量の取引を実行できるXRPLは、幅広いNFTのユースケースに対応している。

 また、設計上グリーンであり、主要なブロックチェーンで初となるカーボンニュートラルを達成している。XRPLは主要なPoW(プルーフオブワーク)型ブロックチェーンよりもはるかに効率的で、数十億のNFTを持続的に作成し、取引できるようにする。

 OnXRPには、「ロイヤリティの適用による短期的な効果はシンプルで、マーケットプレイスとクリエイターの両方が相互利益を通じて有意義な関係の基礎を構築することができるということ。これは、収益や取引量だけでなく、成長によってもたらされるものだ」とある。「ゲーム、ユーティリティ、アートベースのプロジェクトであろうと、クリエイターの目標を理解し、彼らのロードマップの実行を支援することは、エコシステム全体の勝利を意味する。このロイヤルティ構造を確立することで、プロジェクトを新たな領域に押し上げ続けるためのインセンティブを得ることができる」

 XLS-20の実装は、創造する人々の価値を最大化するのに役立ち、XRPLを中央集権型チェーンと区別することができる。これは、クリエイターのためのテクノロジーの可能性を強化し、NFTに適したブロックチェーンとしてのXRPLをより強固なものにする。

(イメージ写真提供:123RF)

https://ripple.com/insights/maximizing-creator-value-with-built-in-royalties/

This story originally appeared on Ripple Insights.

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