ＵＳＤコインがドルペッグ維持できず、シリコンバレー銀行破綻の影響で

　親会社が破綻したシリコンバレー銀行（ＳＶＢ）に対してエクスポージャーを持っていることが明らかになったことで、ステーブルコインＵＳＤコイン（ＵＳＤＣ）が１ドルとのペッグを失った。

　世界第２位のステーブルコインであるＵＳＤコインの発行元であるサークルは１０日、４００億ドルのＵＳＤコイン準備金のうち、３３億ドルをＳＶＢで保有しているとツイッターで公表した。９日に電信送金を開始したが、１０日になっても完了しなかったと説明している。

　「９日に出金のために開始した電信送金が処理されていないことを１０日終わりに確認しており、４００億ドルのＵＳＤコイン準備金のうち３３億ドルがＳＶＢに残されている」

　同社のステーブルコインは、その準備金を巡る懸念が高まっていたため、このニュースを受けて償還が行われた。ブロックチェーン分析企業ナンセンによると、１０日に約２３億４０００万ドルのＵＳＤコインがバーン（焼却）され、投資家がドルを償還する中、トークンが流通から取り除かれた。

　出金が相次いだことでＵＳＤコインの米ドルペッグに圧力がかかり、意図されている１ドルとのペッグを維持できなくなった。暗号資産（仮想通貨）情報サイトのコインマーケットキャップのデータによると、ＵＳＤコインは１１日、１ＵＳＤＣ＝約０．８７７４ドル前後という史上最低水準まで下落していた。

　しかし、ＵＳＤコインはその後、下げ幅を縮小している。記事執筆時、過去１日で約８％下落し、１ＵＳＤＣ＝約０．９１９ドルで取引されている。

　シリコンバレーの技術系・成長スタートアップに最も人気のある金融機関であるシリコンバレー銀行は、１０日に破たんし、ＦＤＩＣ（連邦預金保険公社）の手に落ちた。１０日、ＦＤＩＣはＳＶＢを管理下に置き、ＤＩＮＢ（サンタクララ預金保険国立銀行）を設立。同銀行は現在、ＳＶＢの保険付き預金を保有している。

　カリフォルニア当局は１０日、プレスリリースで「カリフォルニア州サンタクララのシリコンバレー銀行は本日、カリフォルニア州金融保護革新局によって閉鎖された。同局はＦＤＩＣを管財人に任命した」と発表した。

　サークルの他にも、複数の暗号資産企業がＳＶＢでの資金保有を公表している。報じられている通り、破たんした暗号資産貸付業者のブロックファイは、ＳＶＢの口座に２億２７００万ドルの無保管資金を保有している。

　さらに、暗号資産に特化したベンチャーキャピタル企業パンテラも、ＳＶＢに資金を保有している可能性がある。２月３日付けのＳＥＣ（証券取引委員会）への提出書類によると、同社はプライベートファンドの３つのカストディアンの１つとしてＳＶＢを挙げている。

　アバランチブロックチェーンをサポートするアバランチ財団、ＢＡＹＣ（ボアード・エイプ・ヨット・クラブ）を展開するユガラボ、Ｗｅｂ３企業プルーフなどの暗号資産企業も、ＳＶＢの破たんによって大きな打撃を受けている。

●サークル、おそらく状況は依然良好

　ＵＳＤコインに圧力がかかり、米ドルとのペッグを失ったにもかかわらず、ＵＳＤコインは依然良好な状況にある。大手監査企業であるデロイトによると、サークルは準備金の７７％を４週から２８週の短期米国債で保有している。

　これら短期米国債はＢＮＹメロンで保管され、世界最大の資産運用会社であるブラックロックが管理している。デジタル資産投資プラットフォームであるノース・ロック・デジタル創設者のハル・プレス氏の分析によると、これだけでＵＳＤコインの絶対下限は０．７７ドルになるとのことだ。

　プレス氏はさらに、サークルが現金準備金を保有するために利用した他の銀行、シチズンズ・トラスト・バンク、コンシューマーズバンク、ニューヨーク・コミュニティバンク（フラグスターバンクＮ．Ａ．の一部門）・シグネチャーバンクはすべて問題ないようだと指摘している。

　最悪のシナリオでも、サークルの保有者はすべてのＵＳＤコインを少なくとも０．９３ドルで現金化できると予想される、プレス氏は述べている。「サークルが現金を保有しているすべての銀行が倒産し、資産売却によって最悪の場合７０％の現金を返却することになったとしても、ＵＳＤコインは０．９３ドルの価値がある」

（イメージ写真提供：１２３ＲＦ）

This story originally appeared on cryptonews.com.