<年末年始特集>暗号資産市場の23年の振り返りと24年の展望

●23年の暗号資産市場―現物ETFの承認期待や米利下げ観測が追い風に

 23年の暗号資産市場は、順調に上値を追ってきた。暗号資産の代表格であるビットコイン(BTC)と、ドル・円、日経平均株価、NYダウをそれぞれ指数化(年始を100)として比較した表では、あれほど円安の進行が世間を騒がせたとはいえ、ビットコインの上昇が際立つ結果となった。

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出所:ウエルスアドバイザー作成

 22年は暗号資産取引所FTXの破綻をきっかけに売りが加速したが、年明けから買い戻しが先行。一部の米経済指標が市場予想を下回り、FRB(米連邦準備制度理事会)による金融引き締めの長期化観測が後退した。その後、暗号資産企業との取引が多い米シルバーゲート銀行の経営破綻で金融システム不安が広がったものの、米景気の後退とインフレ抑制により年内に米利上げサイクルが終了するとの思惑が広がり、買いが優勢となった。

 大手取引所バイナンスの一時出金停止や米債務上限問題などが意識され、上値は重くなったが、資産運用大手ブラックロックなどによる現物型ビットコインETF(上場投資信託)の承認申請が相次ぎ、市場心理が好転して切り返した。また、XRP(XRP)を運営・管理するリップル社とSEC(米証券取引委員会)の裁判でリップル社の訴えが一部認められたことも追い風になった。

 中国不動産大手の恒大集団がニューヨークで破産を申請すると暗号資産市場にもリスクオフの売りが出て多くの暗号資産が調整色を強めたが、年明けにもSECが現物型ビットコインETFを承認するとの観測や、FRBが23年最後のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、24年に複数回の利下げを見込んでいることが分かり、資金流入期待から年末にかけて上値を切り上げた。

●24年の暗号資産市場―BTCの半減期、ETHのアップデート、XRPの裁判など

 速ければ年明け1月にもSEC(米証券取引委員会)がビットコインの現物に連動したETF(上場投資信託)を承認するとみられている。SECは長きにわたって現物のETFを却下してきたため、機関投資家の需要が抑制されてきたとの指摘もあり、承認されれば大手の機関投資家を呼び込み、ビットコインをはじめとした主要な暗号資産にとって追い風になる。一方、現在の暗号資産市場にある資金がそのままビットコインETFに流入し、その場合は多くの暗号資産が資金流出により下落するとの指摘もある。現在の暗号資産取引所にとっては取引手数料が収益の源泉となっているが、ビットコインETFに投資家の資金が向かうと手数料収入が減少し、暗号資産市場全体に悪影響を及ぼす恐れもある。

 ビットコインについては、3月から4月ごろに予定されている「半減期」がひとつの注目ポイントとなる。半減期はマイニングによる報酬が半分になるシステムで、ビットコインでは約4年に1度行われる。発行量を制限することで急激な希薄化を防ぐ目的があり、希少性が高まるとして半減期前後は上昇トレンドを形成する傾向にある。これまでの半減期前後をみると、その直前や直後に短期的な動きはみられても、大きなトレンドを形成するほどではなかったが、数カ月後には数倍以上に上昇している。今回は現物型ビットコインETFの承認期待が高まっている分、織り込まれつつあるため、上昇トレンドを形成するのに時間を要する可能性はあるものの、中長期的には上昇を期待したい。

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出所:ウエルスアドバイザー作成

 イーサリアム(ETH)は、23年後半をめどに導入が予定されていた大型アップデート「Dencun」が延期されているが、1月に初回テストネット実装が予定され、早ければ2月にはメインネットに実装されるとみられている。トランザクション手数料の削減やネットワーク全体の効率性向上などの改善が期待されており、無難にアップデートを通過できれば安心感から買いに弾みが付く可能性もある。

 XRPは、23年夏の有価証券か否かをめぐる裁判で、個人向け販売について有価証券ではないとの判断が下され、これに対してSECが中間控訴(一審の裁判が完全に終わる前に行う控訴)したものの、これは棄却されている。SECは現時点で完全に負けを認めたわけではないが、米国の民事訴訟における控訴審で一審判決が取り消される確率は低く、リップルの主張が認められたまま裁判が終結を迎えれば、XRPや主要暗号資産だけでなく、ほかのアルトコインにとってもプラスかもしれない。

 外部環境では、主要な各国中銀による金融政策の動向も注目だ。24年にFRB(米連邦準備制度理事会)による利上げサイクルが終了し、一部では利下げの可能性も指摘されていることから、リスク許容度の拡大も暗号資産市場にとってプラスとなる。

●CBDCの動き

 CBDC(中央銀行デジタル通貨)も導入に向けた動きが活発化しそうだ。ブラジル中銀が24年に導入を予定しているほか、ロシア中銀は24年にかけてパイロットプログラムでテストを予定。韓国中銀も24年内に10万人規模の試験運用を開始する計画だ。EU(欧州連合)諸国の中銀もCBDCなどの決済用新技術の検討を開始している。

 また、日銀は現時点でCBDCを発行する計画はないとしているが、CBDCのニーズが高まっていく可能性を指摘。実証実験と制度設計面の検討を進めていくとしている。

 CBDCは決済の利便性のほか、匿名性の高い現金とは異なり、利用者の足跡を追えることから、マネーロンダリング対策としても有効となる。一方、オフライン状態では使えず、セキュリティ面での懸念もあり、こうした面での整備が急がれる。

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