トークン化をうまく利用するためのビジネス戦略

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 暗号資産(仮想通貨)決済はブロックチェーン技術の初期のイノベーションと普及に貢献したが、アクセス・効率性・流動性の向上という中核的なメリットは現在、この技術の最新かつ変革的な応用例である「現実世界資産のトークン化」の原動力となっている。そして、ビジネスリーダーたちはそれに気付き始めている。

 リップルの「2023年新価値レポート」の回答者の72%は、今後3年以内にイノベーションを推進する手段としてトークン化を検討すると回答している。

 これらのビジネスが成功するためには、ブロックチェーンの可能性を最大限に引き出すことができる要素や業界を考慮した資産トークン化戦略を構築する必要がある。

●ビジネス価値を解き放つ

 トークン化への関心の高まりや応用事例の増加は、ブロックチェーン技術が可能にしている幅広いメリットにまで遡ることができる。金融資産や不動産から、所有権やイベントチケット、カーボンクレジットのトークン化まで、トークン化は管理の合理化、アクセシビリティの向上、流動性の拡大を通じて事業収益の最大化に貢献している。

 主なメリットのひとつは、透明性の向上だ。ブロックチェーン上に記録される取引データは変更不可能であるため、機密情報の安全性が改善し、エコシステムの信頼性も高まる。不透明性や二重計上が課題となっている自主的炭素クレジット市場のような非効率的な市場にとって、これは信頼性の飛躍的向上を意味する。

 また、トークン化は従来の参入障壁を下げ、コストや資産価格を減らし、地理的な境界を無くすことで、資産クラスへのアクセスを改善することができる。これにより企業は、かつては手の届かなかった現実世界資産を幅広く顧客に提供することができる。例えば、世界の片隅にある不動産プロジェクトをトークン化し、他の地域の投資家に利用しやすい価格帯で提供することも可能となる。

 しかし、トークン化のメリットは、トークン化資産市場における流動性が高まり、強力な流通市場が形成されて初めて実を結ぶ。

 企業は、迅速な取引、管理手数料の削減、コストの削減など、ブロックチェーン上のトークン化資産の運用効率からさらなる恩恵を受けることができる。一例として、XRP台帳(XRPL)は金融ユースケースのために開発されたオープンソースの分散型公開ブロックチェーンで、10年以上にわたって26億ドル件以上の取引をエラーなくリアルタイムで実行している。

 また、ブロックチェーンとDLT(分散型台帳技術)は分散的であるため、トークン化資産市場はタイムゾーンや従来の市場時間に関係なく24時間365日アクセス可能だ。前述の通り、ブロックチェーン取引は変更不可能であるため、トークン化資産のトレーサビリティを飛躍的に向上させることができる。これらのメリットがそれぞれ、収益に好影響を与えたり、エンドユーザーに還元されることで、企業は市場における競争優位性を構築することができる。

●トークン化の最前線に立つ業界

 トークン化が世界の隅々まで普及していくことは間違いないが、新興のトークン経済で特に成功する可能性が高い業界もある。上記の基礎的要素に支えられ、暗号資産流動性プロバイダーが加わった先行組がトークン化の普及をリードすることになるだろう。

 銀行発行のステーブルコインが注目を集め続ける中、金融機関は決済エコシステムにおいて極めて重要な役割を果たすだろう。最新の決済ソリューションにブロックチェーンを活用すれば、ステーブルコインは決済時間の短縮、コスト削減、透明性の向上を実現しながら、加盟店決済、クロスボーダー決済、財務機能、トークン化ロイヤリティプログラムといったユースケースを可能にする。

 資産運用ファンドもまた、大きな変化を迎えている。BNYメロンの調査で、回答者の97%はトークン化が金融業界に革命を起こすと考えていることがわかった。リップルの「2023新価値レポート」でも同様の傾向が見られ、世界の金融リーダーの半分以上が今後3年以内にデジタル資産カストディを利用する計画であると回答した。企業はトークン化資産のメリットを顧客に伝えようと意欲的になっている。

 伝統的銀行もトークン化経済で成功するのに有利な立場に立っている。法定通貨、デジタル通貨(ステーブルコインや暗号資産)、トークン化資産など、さまざまな資産を保管する統一的プラットフォームを提供することで、銀行は個人の金融ポートフォリオを包括的に把握し、顧客の信頼とエンゲージメントを高めることができる。

●トークン化経済の基礎的要素

 トークン化の未来に向けて準備を整え、これらのメリットを活用しようとする企業は、流動性の確保、オン・オフランプ、カストディ、コンプライアンスという成功の基盤となる4つの重要要素について計画しなければならない。

・流動性の確保:流動性とは、資産価格に大きな変化を与えることなく1つの資産を売買する能力を指す。流動性は中核的な財務機能を促進し、企業の成長を支援し、資産保有者をリスクから守る。

・オン・オフランプ:伝統的資産をデジタル資産(逆もまた同様)にシームレスに変換するプロセスは、オン・オフランプとして知られる。この機能は、価値の変換と移転を容易にし、異なる通貨・資産間のギャップを埋めるために不可欠となる。この目的のために、企業は暗号資産ネイティブ決済サービスプロバイダーにますます依存するようになるだろう。

・カストディ:トークン化の世界ではセキュリティが最も重要である。カストディとはデジタル資産の安全な保管のことを指し、取引、ステーキング、レンディング、売買など、ブロックチェーン上のあらゆる取引関連の活動を支える。堅牢で機関レベルの暗号資産カストディソリューションは、デジタル資産の安全性を確立し、シームレスなユーザー体験を提供する。

・コンプライアンス:コンプライアンスは交渉の余地のない要素だ。トークン化に関与する企業は、現在および未来の規制基準を遵守し、業務の合法性を確保しなければならない。体系的なコンプライアンス枠組みは、信頼と信用を構築し、成長環境を整えることができる。

●前進への道

 トークン化はビジネスの未来を積極的に変革している。透明性の向上から前例のない流動性への普遍的アクセスまで、トークン化がもたらす価値を活用する企業は、進化を続けるこの複雑な環境にうまく対処できる準備を整えなければならない。

(イメージ写真提供:123RF)

https://ripple.com/insights/business-strategies-for-navigating-tokenization-part-2/

This story originally appeared on Ripple Insights.

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