キャッシュレス決済システム:ブロックチェーンは決済の未来をどう変えるか

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 1950年代にクレジットカードが登場したことで、当時は不可能と思われた「物理的な通貨のない世界」というビジョンが生まれた。今日、デジタル決済の人気が急上昇する中、そのビジョンは急速に現実のものとなりつつある。それでも課題は残っており、ブロックチェーンがキャッシュレスの未来を切り開くカギになるかもしれない。

●進化するキャッシュレス決済システム

 キャッシュレス決済は、伝統的な銀行送金やカード決済から、CBDC(中央銀行デジタル通貨)などのブロックチェーンを使った最先端の金融ソリューションまで、幅広いデジタル取引を包含している。デビットカードやクレジットカードをスワイプしたり、タッチしたり、モバイルウォレットを使って買い物をするときはいつでも、何かしらの形でキャッシュレス経済に参加していることになる。

 物理的な現金からの脱却は、インターネットが成熟して以来、勢いを増しているが、他の多くの動向がデジタル決済の主流採用に拍車をかけている。スマートフォンや電子決済システムの登場は、モバイル決済とデジタルウォレットの成長に大きな役割を果たした。ペイパルやアリペイ、グーグルペイなどのアプリも、キャッシュレスP2P決済を促進し、従来の銀行口座を持たない人々をキャッシュレス経済に取り込んでいる。

 しかし、デジタル決済を発展させる上で、パンデミック(感染症の世界的流行)を超える重要な出来事はなかったかもしれない。タッチレス決済と感染リスクのある現金への不安から、世界中のGDP総額に占めるデジタル決済手段の割合が急増した。マスターカードの調査によると、消費者の82%は非接触決済をより清潔な支払い方法とみなし、74%はパンデミック後も非接触決済方法を利用し続けると回答している。

 現在、世界中の成人の3分の2以上がキャッシュレスで支払いを行っている。中南米の消費者が現金からデジタル決済に移行している一方、日本は完全に現金を排除しようとしている。この傾向はスウェーデンでも同様で、現金需要は10年間で50%以上減少している。企業、都市、中央銀行のすべてが注目し、デジタル決済の威力を受け入れている。

●キャッシュレス決済の長所と短所

 キャッシュレス決済は企業にとって多くの利点がある。現金を数えたり、現金の受け渡しや移動の手配をしたり、紛失や盗難対策として物理的なセキュリティを確保したりといった、頭の痛い作業を省くことができる。同時に、高速で簡単なデジタル決済取引は、特に若年測の顧客満足度を高めることができる。

 業務の合理化、リスクの軽減、顧客満足度の向上は、すべて収益の改善に貢献する。しかし、このような利点があるにもかかわらず、デジタル決済には課題が残っており、これが現金決済を存続させている。

 インターネットに接続できない人口が約26億人、銀行口座を持たない人口が世界で約14億人いるなど、経済的・社会的な現実がデジタル決済の導入を制限している。キャッシュレス決済の推進者は、低所得者やテクノロジーに疎いコミュニティを尊重し、効果的に取り込む方法を考慮しなければならない。

 熱心な導入国であっても、電力やインターネット、無線LANの障害といった問題は現実的な課題である。また、現金を撤去すれば物理的なセキュリティ上の課題は解消されるが、デジタル上の懸念がさらに大きくなる可能性がある。さらに、プライバシーや顧客データの保護に関する根本的な問題も重なる。

 キャッシュレス決済が真に普遍的でシームレスなものになるためには、それを監督する規制当局や政府からの大きな賛同と支援も必要だ。例えば、基本的なレベルでは、世界中の多くの規制当局や加盟店は、クレジットカードやデビットカードのプロバイダーが課す交換手数料が高騰している状況に依然反発している。現金を完全になくすには、さらなる教育と保証が必要である。

●ブロックチェーンの役割

 ブロックチェーン技術の登場により、こうした課題に正面から取り組む機会が与えられた。その非中央集権的な性質と固有の利点により、クロスボーダー決済を従来のデジタルオプションよりも迅速かつ安価で、透明性の高いものにする能力がすでに証明されている。

 現在、多くの業界やイノベーターがブロックチェーンを利用して現金を完全になくそうとしている。実際、世界の金融業界のリーダーたちは、暗号資産(仮想通貨)とブロックチェーン技術の最重要ユースケースとして決済を挙げている。これは小売や商取引において明らかであり、タグ・ホイヤーやグッチ、さらにはフェラーリといった高級ブランドを含め、デジタル通貨やステーブルコインを決済手段として受け入れる企業が増えている。

 世界中の政府や中央銀行もまた、デジタル通貨を現金に代わるより効率的で包括的かつ持続可能なものとして評価し、その導入に乗り出している。パンデミックとその中で問題となった給付金支給は、こうしたデジタル流通手段の明確なユースケースのひとつとなった。政府はまた、匿名の現金取引を悪用する違法行為に対抗し、より有用な政策ツールとして運用し、業務を効率化し、携帯電話など広く利用されているデジタル機器へのアクセスをリンクさせることで金融包摂を改善するため、デジタル通貨の使用を模索している。

●未来の決済システムはキャッシュレス

 今後、テクノロジーの新たな進歩により、キャッシュレス決済の進化はさらに進むだろう。利便性を追求する消費者は、自分の好みに合わせた支払い方法を選べるようになり、AI(人工知能)や機会学習はプロバイダーのデータとセキュリティ対策の簡素化・合理化を約束する。これは、不正検知の取り組みにおいてすでに証明されている。

 公共交通機関からチケットの発券に至るまで、キャッシュレス決済の可能性は、日常生活に溶け込むことで比類のない利便性と効率性を提供する。しかし、その可能性を実現するためには、特にデータのプライバシーとセキュリティに関して、先進的な政策枠組みが必要である。

 世界がキャッシュレス社会に向かう中で、ブロックチェーンとデジタル通貨は重要な要素である。クロスボーダー決済に革命を起こしたり、十分なサービスを受けていないコミュニティに力を与えたりなど、ブロックチェーンはより包括的で効率的な金融システムを解き放つカギを握っている。

(イメージ写真提供:123RF)

https://ripple.com/insights/evolving-cashless-payment-systems/

This story originally appeared on Ripple Insights.

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