暗号資産とモバイル決済でアフリカの金融包摂を拡大

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 ●はじめに

 アフリカの発展途上国では、デジタル決済の利用が世界平均を上回るスピードで拡大している。このモバイル主導の変革は非常に広範囲にわたるものであり、一般的に保守的な銀行部門がモバイルマネー技術の最先端に立ち、これまで伝統的な金融システムから締め出されてきた個人にも手を差し伸べている。このような金融排除が起こる理由として、口座開設にかかるコストの問題、非常に高額な送金手数料、本人確認書類の不足、銀行の実店舗へのアクセスが限られていること、依然として現金で運用されている経済状況などが挙げられる。

 アフリカでは、デジタル決済は過去10年間で11倍に急成長している。それに伴い、上記のような障壁は打ち破られ、何百万人もの人々が現金を使うことなく商品やサービスにアクセスできるようになっている。サハラ以南のアフリカでは、成人の65%が銀行口座を持っていないという状況の中で、多くの人にとって今こそ真の変革の時となり得る。暗号資産(仮想通貨)は同時に、アフリカ全体で近年は1200%増という大幅な市場成長を遂げており、この技術を既存のモバイルマネーインフラと融合させることで、さらなる金融包摂を促進させることができる。モバイルマネーは国内の決済手段の効率化に役立つが、暗号資産を活用したサービスは、コストの削減、セキュリティの向上、金融包摂的な決済オプションの提供、企業や消費者のための国際取引のさらなる簡素化を実現することができる。

●モバイルマネーとは?

 モバイルマネーとは、SIMカードを使ってモバイルデバイス間での資金移動を可能にするデジタル決済技術で、ユーザーは銀行に接続することなく自由に取引を行うことができる。この技術は、金融インフラが不足している地域において、金融サービスへのアクセスを拡大する画期的なツールとして注目されてきた。SIMカードは、スマートフォンと非スマートフォンの両方で利用することができるため、モバイルマネー技術の可能性は非常に大きい。

 世界のモバイルマネーユーザーの半分近くがアフリカに住み、世界のモバイルマネーの取引量の約3分の2を占めている。

●主な支援傾向

 ガーナやコートジボワールなど、アフリカ一部地域の規制当局は、モバイルマネーによる決済システムへのアクセス拡大がもたらす可能性に着目している。ガーナでは、エージェントバンキング(代理店が金融サービスを提供する仕組み)と電子マネーに関するガイドラインが改正され、事業者は顧客にモバイルマネー口座を提供できるようになった。こうして、モバイルマネー口座を持つガーナ国民はわずか3年で3倍に増えた。コートジボワールでも、この業界における政策がうまく進展したことで、モバイルマネーの利用者数は3年で40%増加している。

 モバイルマネーの普及拡大に加え、アフリカにおける途上国への国内送金額は、21年に6.2%増加し450億ドルに達した。送金額が増加しているにもかかわらず、従来の決済手段は依然として利用者に高額な送金手数料を課しており、サハラ以南のアフリカでは8%などという世界で最も高い手数料が設定されている。アフリカでは、暗号資産を活用した送金手段、特に手数料を大幅に削減し、数秒で決済を完了できる暗号資産決済への需要や市場が明確に存在しているのだ。

 さらに、22年4月には、中央アフリカ共和国が世界で2カ国目にビットコイン(BTC)を法定通貨として正式に採用し、経済全体における暗号資産の利用を合法化した。このような変化は、非銀行の競合他社に市場アクセスを拡大し、利用者負担のコストを下げ、正式な金融参加を促すのに役立つとされている。

●成功への障壁と課題

 アフリカ全体としては、国家間で複雑で競争の激しい状況が絡み合っており、その結果として相互運用性が低くなっている。例えば、暗号資産とブロックチェーン技術を既存のモバイルマネーインフラ(アフリカだけでも300以上)に組み込むことは、国の多くがクローズドループシステムであるために難しく、ある特定の口座にある資金のユースケースは非常に限られている。

 また、暗号資産アプリやデジタルウォレットの利用、暗号資産の購入・売却・保有など、平均的な人が暗号資産に慣れるにはかなりの学習が必要だ。モバイルマネーなどといった新しい技術が成功を収めているが、その普及率が高いのは、暗号資産に比べて従来の法定通貨がより身近な選択肢であることに安心感を抱いているためかもしれない。

 最後に、アフリカではモバイルマネーの人気が高まるにつれて、それを使ったマネーロンダリングや組織犯罪が増加している。犯罪活動を減速させ、犯罪を完全に回避するために積極的な戦略を導入するなど取り組みは行っているものの、どんな決済プラットフォームにも不正行為はつきものである。技術や暗号資産決済の全体像がより良く把握されるまで、市民は暗号資産活用のデジタル決済を利用することにためらいを感じているのかもしれない。

●可能性と次に起こること

 組織犯罪への懸念に対処するため、KYC(顧客確認)やAML(マネーロンダリング対策)などといったセーフガードを、ブロックチェーンや暗号資産技術を使ったモバイルマネー取引に関する規定に組み込むことで、より広範囲かつ安全で拡張可能な導入を促進することができる。また、アフリカがマネーロンダリングとの戦いに打ち勝ち、アフリカの暗号資産が長期的な成功を収めるためにも役立つだろう。

 こういったセーフガードに対する意識を高め、暗号資産利用の利点と使いやすさをエンドユーザーや機関に教育することは、一般の人々からの信頼と賛同を得るため、そしてその技術をうまく導入するためのカギとなる。

 最後に、アフリカのフィンテックには、モバイルマネーの成功に乗じて、一般ユーザーにとってよりアクセスしやすく、親しみやすく、手ごろな決済を可能にする暗号資産中心のツールの導入を促進することができる絶好の機会がある。モバイルマネーは当初は無名の技術であったが、導入に成功し、普及が拡大することでアフリカユーザーからの信頼を得るようになった。暗号資産には今、同じことを実現する可能性がある。例えば、PayDekは、アフリカのフリーランサーやオンデマンドワーカーへの暗号資産を利用した即時決済を可能にした。

 世界の労働力がリモート、あるいはハイブリッドファーストな働き方に移行する中、アフリカが暗号資産を利用した決済でその潜在能力を引き出し、経済を活性化させる可能性がさらに高まっている。アフリカの労働者は今、世界に進出する機会を得たのだ。何百万人もが貧困から抜け出し、リモートワーカーはモバイルデバイスのデジタルウォレットから効率的に暗号資産で支払いを受けることができるだろう。

 このようなユースケースは、従来の銀行事業者と非銀行事業者の両方に、未開拓の人々に大規模なサービスを提供する機会を与えるだけでなく、アフリカの途上国で銀行口座を持たない多くの人々のために、金融サービスへのアクセスを拡大することができる。

(イメージ写真提供:123RF)

https://ripple.com/insights/broadening-financial-inclusion-in-africa-through-crypto-and-mobile-payments/

This story originally appeared on Ripple Insights.

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