資産トークン化の現在と未来

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 現在、資産トークン化市場の推定価値は35億ドルに上る。30年までには16兆ドルに達するという予測もあり、トークン化市場は非常に大きな可能性を有している。では、この技術がその可能性を完全に発揮するのを妨げているものはなんだろうか。これは、24年上旬に開催された「ロンドントークン化政策サミット」で投げかけられた質問である。

 リップルとインペリアル・カレッジ・ビジネス・スクールの金融技術センターが主催したこのサミットには、学術界、産業界、政治界のトップが参加し、デジタル資産の未来について議論した。金融セクターの今後を垣間見るために、下記の重要な洞察と提言が取り上げられた。

●トークン化のユースケース:デジタル化の「本命」

 トークン化は決済ゲートウェイ仲介業者の排除、決済処理業者の効率化、データ保護、データプライバシーおよび透明性の確保、リアルタイム決済の実現などを約束し、ブロックチェーン技術の「真の」機能として支持されている。それは、幅広い分野に大きな影響を与える可能性を秘めている。

 トークン化された住宅ローン、消費者ローン、マイクロローン(小口融資)の台頭により、プライベートクレジットやプライベートデットは2番目に急成長している市場となっており、一方で不動産購入や米国債も恩恵を受けている。トークン化のその他のユースケースとしては、中小企業の資産フローの強化、カーボンクレジット取引の効率化、伝統的資産より優れた価格発見機能などが挙げられる。

 しかし、トークン化は新たな資産クラスとしての可能性を秘めているにもかかわらず、主流としての導入には課題が残る。確立された特別目的事業体がないため、現実世界資産をトークン化することは難しい。相互運用性を向上させるためには、クロスチェーンのプロトコルが必要である。流通市場での流動性が限られているため、投資リスクが高くなる。また、金融エコシステム間のサイロ化を解消するために、トークン化を単一のサービスに簡素化するプロバイダーが必要となる。

 これらの課題を克服し、トークン化を普及させるために、担保化、評価、パスキーといった3つの分野が重視されている。トークンを十分な資産によって裏付けし、国際的に同じ価値を維持し、安全なパスキーや適切な鍵管理によってセキュリティを確保することができれば、信頼と普及を促進することができるだろう。

●新たな金融枠組み

 トークン化の話題の中心は、トークン化経済の基礎となる強固な規制枠組みの重要性である。この枠組みが整備されれば、持続可能な成長と発展に必要な構造、セーフガード、信頼が提供されることになる。

 現実世界資産に関する規制と、デジタル資産に関するより標準化された規制が国によって異なることは、重要な課題のひとつである。特にヨーロッパでは、加盟国ごとに伝統的資産の所有権が異なるため、汎欧州的なアプローチが難しくなるという問題がある。

 もちろん、デジタル資産のガバナンスにおいても差異は存在する。例えばルクセンブルクにはデジタル証券保管機関があるが、英国にはない。金融市場での分散型台帳技術の利用が拡大していることから、こうした違いが規制の裁定につがなる可能性がある。

 こうした差異を解決するカギは、政治家のコミュニケーションにある。規制の整備とイノベーションを支援する政府政策を生み出すには、官民の協力が不可欠だ。ただし、まずはトークン化のメリットについて、特に金融部門以外の人々の理解を深める必要がある。

 例えば英国は、米国や中国などの巨大市場との競争に打ち勝つため、政策の改善によってデジタルイノベーションの促進に取り組んでいる。金融規制当局に柔軟な規定を作成する権限を与え、整合性のあるリスク管理イニシアチブを支持し、優先的な国際的機会と課題に対処することで、デジタル資産の利用を促進しようとしている。現在、このイニシアチブの一環として、ステーブルコインの計画を定めた暗号資産(仮想通貨)トークンおよびデジタル資産に関する英国の新たな枠組みが策定されている。

●今後の展望

 ひとつはっきりしていることがある。トークン化は単なる流行語ではなく、金融業界を再形成しようとする急成長を遂げているムーブメントなのだ。最も高いレベルでは、トークン化プロセスを利用して各国間の効率性と相互運用性を改善することで、システム間の摩擦によって毎年失われる世界のGDP(国内総生産)の5―6%を大幅に減少させ、すべての市場参加者の長期的な収益全体を押し上げることができる。

 銀行、伝統的金融機関、規制当局のすべてが、トークン化の導入を促進させるカギとなる。トークン化の可能性を最大限に引き出すには、普及拡大を可能にする政策、規制の明確性、継続的な教育と協力体制を取り入れた協調的な取り組みが必要となる。

(イメージ写真提供:123RF)

https://ripple.com/insights/asset-tokenization-today-and-tomorrow/

This story originally appeared on Ripple Insights.

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