スマートコントラクトとは?

 仮想通貨でビットコイン(BTC)に次ぐ時価総額を誇るイーサリアム(ETH)には「スマートコントラクト」と呼ばれるビットコインにはない機能があります。直訳すると「契約の自動化」となります。企業がICO(イニシャル・コイン・オファリング)でトークンを発行して新たなサービスを展開する場合も、多くがこのイーサリアムのスマートコントラクトを活用しています。

 一般的に物品の売買契約は、消費者が商品を注文し、販売業者が生産者に手配、消費者が金銭を支払い、販売業者が生産者から調達した商品を渡して成り立ちます。販売業者はいわば仲介人です。また、インターネット上のオークションでも、出品者と入札者の間には、オークションの場を提供する仲介業者がいます。例えば高価なものを購入したい、あるいは売却したいと思っても、所有者が本当に譲ってくれるのか、もしくは購入希望者が見合った金額を支払ってくれるのか分からないと契約はできません。そこで多くは信頼できる第三者(仲介人)を立て、相手の身分を証明したり、契約の立会人となったりしてくれます。当然、この場合の仲介人には謝礼が発生します。

 スマートコントラクトはこうした契約を自動化する仕組みのことです。ビットコインで使われているブロックチェーンでは、ブロックに取引情報しか書き込めませんが、イーサリアムには契約情報を書き込むスペースがあり、これがスマートコントラクトを可能にしています。

 スマートコントラクトを利用すれば仲介人(業者)が不要になります。身近なものとしてよく例に挙げられるのが自動販売機です。「金銭を投入」して「欲しい商品のボタンを押す」と「その商品が手に入る」というもので、そこに仲介人は存在しません。また、すでに海外ではイーサリアムのスマートコントラクトを利用した音楽配信サービスもあります。一般的な音楽配信やCD販売といった楽曲提供にはアーティスト以外にレコード会社や所属事務所など多くの中間業者が存在しますが、スマートコントラクトを使えばユーザーに直接販売できるため、販売価格を低めに設定してもアーティストの収入増が見込めます。

 ただ、課題もあります。ブロックチェーン技術そのものに送金の処理能力や速度に限界があり、契約内容が複雑になればそれだけ速度の低下などが予想されます。また、多くの企業がICOにイーサリアムを選択しており、それだけ取引量が増えるとさらなる速度の低下が予想されます。場合によっては送金に数日かかることもあるため、今後の改善に期待したいところです。